5~6日 甲斐駒ケ岳

<山行報告> 甲斐駒ケ岳

日程:平成27年9月5日(土)~6日(日)

メンバー:K(リーダー)、S

 コースタイム:(9/5) 尾白渓谷駐車場6:17~8:22横手・白須分岐~10:14刃渡り~10:44刀利天狗~11:35五合目~12:56七丈小屋

(9/6) 七丈小屋3:45~4:27八合目~5:40駒ヶ岳神社奥社~5:56甲斐駒ケ岳山頂6:19~7:53七丈小屋8:46~9:39五合目~10:39刀利天狗~12:14横手・白須分岐~13:48尾白渓谷駐車場

 

 全国に多くの駒ヶ岳はあれど、本場ヨーロッパ・アルプスの峰々にも引けを取らない威厳のある山容とその標高の高さにより、甲斐駒ケ岳が一番でしょう。あの日本百名山の著者、深田久弥は「もし、日本の十名山を選べと言われても、私はこの山を落さないだろう」と著しています。また、今回登った黒戸尾根に関して、深田は「下から上まで、ほとんど急坂ずくめである。しかもそれが上に行くほど、険峻を加えるのだから辛い。それだけにまた、いかにも山登りをしたという愉快さもある。」と記しています。その「愉快さ」を体感するべく、この山に挑戦しました。

 実は3,000級の山に登るのは初めて、テント泊も初めて、大きめのザック、登山靴やシェラフをはじめほとんどの装備が新品という初心者なので、気持ち的にはKリーダーにすっかり頼ってしまう形になっていました。今まで体験したことのない重装備で、果たして山頂に立って無事戻って帰れるか、期待と不安が交錯しながら尾白渓谷駐車場を午前6時過ぎにスタートしました。この日は前後2週間のなかで、唯一晴天に恵まれ「晴れ男」の面目躍如です。

 この黒戸尾根は駒ヶ岳神社のいわば表参道で、昔からの修験道の古道として知られています。登山口近くの駒ヶ岳神社下社に安全祈祷し、尾白川の吊り橋を渡って、いよいよ登りが始まります。いきなり急坂だったのですが、一週間前から残業もしないで体調を整えてきたので、横手・白須の分岐を過ぎ刃渡りまでは快調でした。ところが、自分の体重も含め90kg越えの重さで足にかなりの負担がきたらしく、左太ももが吊り始めそうになりました。そして、刀利天狗の梯子を登っていた際に、ついに両ふくらはぎが吊ってしまいました。その時、先行していたKリーダーが「Sさん、はいチーズ!」と写真を撮ってくれたのですが、もちろん顔は一世一代の作り笑いで、内心は「これは最大のピンチ」でした。なんとか根性で登りきったあと、私の荷物の一部をKリーダーに背負ってもらうことによって、やっと足の吊りが治り始めました。しかし、スピードはガクンと落ちて、特に五合目からの梯子と鎖場の連続する箇所では、まさに尺取虫のごとく歩を進めざるを得なくなりました。

「七丈小屋に着きましたよ~」とKリーダーの声が聞こえたのは、かなり唐突でした。もっと開けた場所に設置された小屋をイメージしていたので、ちょっと意外でした。到着は午後1時前で、色々とあった割には一応予定どおり1日目の山行が終わりました。テント中ではKリーダーにご馳走を振る舞ってもらい、酒を酌み交わしながら、非日常的なゆったりとした時間を過ごすことができました。

翌日は午前2時に起床。支度をして3時45分にテントを出発、山頂を目指しました。ここもいきなり急登、心拍数が一気に上がります。森林限界を過ぎると下界の街の明かりがちらほら、八合目にある御来迎場に到着するころは、白みかけてきて何とか天気は持ちそうな感じでしたが、残念ながらご来光はきれいに見ることはできませんでした。この八合目に着いても、まだ山頂を望めることができません。実はここからが鋭く尖った、いくつかの岩山を鎖を使いながらスリリングに越えて行くのですが、もうこうなったら笑うしかなく、深田久弥や言うところの「愉快さ」とはこのことかなと思いました。喘ぎながら、もうそろそろかなと思った瞬間、ここも唐突に駒ヶ岳神社奥社のピークが現れました。ピークに着いて、どうやらここはまだ山頂ではないとKリーダーと話をしていたら、突然一陣の風が吹いてきて、さーっとガスがはれて、約200m位先に甲斐駒の山頂が神々しく姿を現したではないですか。思わず「うぉーつ」と雄叫びをあげていました。

山頂に着くと、次第に遠くのガスも風で吹かれていき、地蔵岳とその奥に富士山、仙丈ケ岳や北岳を始めとする南アルプス山々がすぐ近くに、北西に目を転ずると中央アルプス、東は八ヶ岳など360度の大パノラマを堪能することができました。山頂は風が吹いていたので結構寒く、約20分程留まった後、下山を開始。七丈小屋に着いたころに雨が降り出し、高度を下げるにつれ土砂降りになってしまいました。難所を過ぎたころから、気が緩んだのと昨日からの疲れがどっと来てしまい、下りにもかかわらず時間がかかり、Kリーダーには所々で結構待ってもらう形となってしまいました。

私にとってはアルプスデビューの一生忘れられない山旅となりました。マンツーマンでご指導いただいたKリーダーには心から感謝します。

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